唯一の恋

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「花梨ちゃん、ジャムできたよ」 春に咲いていた花は緑色の大きな実をつけた。そして、ようやく黄色く熟したのだ。それを収穫してジャムを作ったのだそうだ。綺麗なオレンジ色だった。 パンを焼いて、ジャムをつけて食べてみたら、甘酸っぱくておいしかった。 おいしいね、と言いながらも彼は、また寂しそうな顔をしていた。 「私、あなたのことが好きです」 笑顔でいてほしかったのかもしれない。向かい合って座ったまま、私は告白していた。 「カリンの花言葉、知ってる?」 彼は目を伏せたまま話し出した。 「唯一の恋っていうんだって」
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