唯一の恋

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だから、今の状況は私には少し理解できなかった。 ベッドでうとうととしていたら、突然病室のドアが開いて、彼が入ってきたのだ。事故に遭ったことも、入院していることも伝えていないのに、どうして彼がここにいるのだろう。 「花梨ちゃん」 私の姿を認めると、彼は私を抱きしめた。痛いくらいに強く。 「君までいなくなったら、俺はどうしたらいいんだよ」 彼は泣いていた。私のためにこんなに泣いてくれるなら、ケガした甲斐があったかもしれない。 「カリンの花が咲いて実がなるまで、七年かかった。長い七年だった」 「でも、花梨ちゃんと過ごした七年はあっという間だった。いつの間にか週末を楽しみにしている自分に気づいた」 「今日、夢に彼女が出てきたんだ。さよならって言われたんだ。だから……もう一度自分の人生を歩んでみようと思う。花梨ちゃん、もし、まだ俺のこと好きなら、この先の人生、俺と歩んでほしい」 彼は私の目を見てそう言った。私は首を縦に振った。 「カリンの花言葉、限りない可能性っていうのもあるんですって。私、あなたとのこれからの人生が楽しみでしょうがないです」 「限りない可能性か。花梨ちゃんみたいだね」 これからの私たちの人生は、可能性に満ち溢れている。
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