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「おじちゃんも、君のお母さんの声が聞きたくなってね」
「いいよ」
少女は、また一輪毟ると、こちらへ寄越してきた。潰れかけた白い花の形を慎重に指で整えると、耳元へ運び目を閉じる。
メアリーとは、つい数ヶ月前まで連絡を取り合っていた。彼女の手紙には楽しかったこと、嬉しかったこと、そして娘の話しか書かれていない。
しかし、決まって最後には「村へ帰りたい」とあった。つまり、図らずも彼女の望みは叶ってしまったことになる。
それでは、もう一つの君の望みも叶えてあげようではないか。君をもう一度幸せにできるのは僕しかいない。
「君のお母さんはね、ずっと君と一緒にいたかったんだ」
「あたしもお母さんと一緒にいるよ」
少女は鈴蘭を花束にして胸に抱えていた。母親が入った箱を抱えていた時と同じように、その手指は青白く、何かに怯えているように見えた。
「でもお母さんいなくなっちゃったよ」
「そうだね。遠くに行っちゃったんだよね」
「大きくなったら会いに行けるのかな?」
「そうだね。うーんっと大きくなって、少し小さくなったら会えるんじゃないかな」
「どうやったら早く大きくなれるの?」
「そうだなぁ」
「嫌だ! お母さんに会いたいの!」
僕には子どもがいない。癇癪を起こした少女の扱い方なんて知らなかった。
そもそも結婚もしていない。メアリーがいなくなった時点で、僕の人生はその歩みを止めたのだから。
「じゃぁ、とっておきの方法を教えてあげようか」
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