パパ活

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パパ活

 あの日、あのアプリに登録した事で捨てたもの。それは、ひとりの男としての矜持であり、倫理観のようなものだったのではないかと雅之は思う事があった。何か自分の中の「たが」がその時外れたのではないかと、時折恐ろしくなる事があった。そうすると不思議なもので、もっと悪い場所は無いのか、いけない事はないのか、と気が急くような気分になるのだった。 「人生一度きりなんだからさ」  佐分利のそんな言葉が、雅之を揺さぶり続けていた。 「・・・君は、いつもこんな事を、」  雅之は目を背けたまま消え入るような声で言った。「…こんな事をしてるのか」 「パパ活のこと?セックスのこと?」  みすずは徐々に怒気を声に孕ませ始めた。 「――どっちもだ」  着たばかりの上着を脱ぎ、雅之はみすずの細い肩を包むようにかけて前を合わせた。 「風邪をひいてしまう」
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