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そんな行動がまた、みすずの気持ちを苛立たせるのを気づけない程に、雅之は久々に視た若い肢体に動揺していた。
不意に棒切れのような手が雅之の顔面を叩いた。
「あたしの勝手でしょ、そんな事」
見知らぬけもののような光を湛えた瞳で、みすずが雅之を睨んできた。彼女の長い爪を飾る装飾の何かが頬に傷をつけたのか、疼くような痛みがあった。
「おじさんみたいな人が一番嫌われるんだよ。女に恥かかせてさ。誰も幸せにしない、つまらない人。あたしのパパみたいな人」
その言葉を聴いた雅之は、自分の脚もとが抜けるかのような感覚と共に、過去に引き戻された。
それは社会に出て初めて役職らしいものがついた頃に犯した失敗だった。失敗という言葉は不適切かもしれない。過ちだった。
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