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 ぞっとするような低い声でそう言うと、女性はベッドから出て立ち上がった。 「子どもが出来たの」  驚いて雅之は上体を起こした。気を付けていた筈だった。特に彼女から興味を喪ってからは。だが、抱き続けていたのは事実だった。便利に、まるで何かを処理するように、彼女を抱いていた。 「俺の子なのか」  かろうじて言った言葉だった。 「…貴方らしいわ」  彼女が洋服を着て無言で出て行くのを、雅之はどこか虚ろな気持ちと、清々としたような気持ちで眺めていた。  程無くして退職願が出され、彼女は会社を去った。彼女がその後どうしたのか、雅之は知ろうとはしなかった。知りたくもなかった。その女性の名は――みすずと言った。当時でさえ、古風な名前だと思ったものだった。ずっと記憶の底で蓋をしてきたその名前の少女が今、雅之の眼前に居た。
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