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そんな偶然があるだろうか。しかし、彼女がそのまま産んでいたとしたら、この子位の歳になっていておかしくはなかった。
「君のパパが知ったら哀しむ」
祈るような気持ちで雅之は言った。そんな馬鹿げた偶然があるものか。
「パパなんて、パパなんて知らない。顔も、どこに居るかも」
震える声でみすずは言った。挑みかかるようだった眼が泳いだ。
それは雅之が聞きたかった答えでは無かった。自分が罪を重ねていないことの証明を、雅之は欲していたのだ。そのような偶然が起きる筈がない事を証明して欲しかった。その望みは叶わなかった。
すると、急に残酷な考えが頭に浮かんだ。
もし、自分の子かもしれないこの娘を抱けば、それは本当に禁断の果実を食む事になりはしないか。
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