禁忌

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「最初に君が望んでいたものを僕は渡せる。君も僕の望むものを差し出す。君も僕も、これで幸せになれる。そうだろう?」 「…最低」  けものに相応しい低い言葉が、みすずの薄い唇から洩れた。自分に一番似合う言葉だと、雅之は唇の端に笑みさえ浮かべた。 「パパになってやろうと言ってるんだ。喜べよ」  雅之はベッドに歩み寄り、尻ポケットの札入れから三枚抜いて、みすずの身体に投げた。乳房から肚、茂みまで、はらはらと札が舞い、落ちた。 「契約を持ちかけたのは君なんだぞ」  雅之はこれもポケットに収ってあったスマートフォンを取り出し、カメラモードにして横たわる少女にシャッターを切った。模造品のシャッター音が、無音だった部屋に虚ろに響いた。 「これは担保だ」  雅之がそう言うよりも早く、みすずの身体がまさにけものの敏捷さで起き上がり、雅之に躍り掛かった。 「ふざけんな!」
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