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そこに立っていたのは、ほっそりとして小さな顔をした少女だった。服装こそ大人っぽいものを着ていたし、化粧もきっちりとしているが、歳は隠せなかった。丁寧に編まれた黒髪がかえって余計に幼さを醸し、少なくとも雅之の年齢の男性からすれば、彼女は明らかに子どもと言っていい外見だった。けれども、オフショルダーのブラウスの肩が傾く陽を浴びて輝くさまは、何か一層、雅之の心を揺さぶり、衝動をつき動かしたのだった。
「…帰るんだよ」
雅之は務めて冷静にそう返し、ジャケットを羽織った。
「何もしないで?」
みすずは雅之の本意をわざと汲み取らずに、壁に肩を預けてタオルの裾を器用に操り、濡れた長い髪の先を拭いながら訊いた。
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