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みすずは笑わない。それも大人びて見える部分だった。どこかしら翳りがある。何か冷えきった熱量がその瞳に浮かんでいる。最初に安っぽいデザインのアプリの画像を見た時、何故だか雅之はみすずに心惹かれた。きっちりと化粧をした若い娘たちのプロフィールが次から次に軽い調子で現れて利用者に選択を迫るそのアプリの中で、彼女の深い憂いを帯びた横顔だけが妙に心のどこかに引っかかってきたのだった。
「何もしない。何も無かった事にしよう。こんな事、馬鹿げてる」
雅之は俯き、静かに言った。
「もう遅いわ」
「そんな事は」
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