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第一章 逃亡(木下ヨル)
僕は必死に走っていた。ここで捕まる訳にはいかない。
路地をでたらめに曲がって曲がって、車道に出ると、ちょうど空車のライトを点灯させたタクシーが来た。僕は慌てて手を上げ、でたらめに目的地を告げた。
タクシーが走り出すと、振り返ってみたが、追手はいないようだった。何とかまいたに違いない。僕は一息ついた。
郊外の夜道は灯りが少なく、薄暗かった。道路沿いにまばらに店が並んでいる。大型のスーパーや、ファミリーレストランが、そこだけ煌々と輝き、島のように浮かんで見えた。
僕はポケットから財布を取り出した。カードを使うわけにはいかない。僕はいつもキャッシュを持ち歩いている。
僕は何も悪いことはしていない。でも、法は僕を拘束しうる状況にあるのだ。
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