第一章 逃亡(木下ヨル)

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 大きく迂回してようやく友人の波崎修の家にたどりついた。マンションの五階、インターフォンを鳴らして「俺だ」というと、エントランスのドアロックが解除された。セキュリティがしっかりしているマンションだが、その分、監視カメラを見られたらアウトだ。僕はキャップをかぶっていた。  修は「おかえり」とほっとしたように言った。 「ただいま」僕は返した。来ていた黒っぽいウィンドブレーカーを脱いで、キャップもとる。これだけでなく、来ている服も、みな修からの借りものだ。背格好が似ていると前からよく言われていたのが、こんな形で幸いするとは思ってもみなかった。 「顔が険しいね、何かあった?」 修が僕の脱いだ服をハンガーにかけながら聞いた。 「ああ、見つかりそうになって、慌てて逃げてきた」 修は眉をひそめる。 「あんまり無理するなよ。いつまでもここにいていいんだから」 「でも、ずっと手をこまねいている訳にはいかないよ」 僕は答えた。
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