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大きく迂回してようやく友人の波崎修の家にたどりついた。マンションの五階、インターフォンを鳴らして「俺だ」というと、エントランスのドアロックが解除された。セキュリティがしっかりしているマンションだが、その分、監視カメラを見られたらアウトだ。僕はキャップをかぶっていた。
修は「おかえり」とほっとしたように言った。
「ただいま」僕は返した。来ていた黒っぽいウィンドブレーカーを脱いで、キャップもとる。これだけでなく、来ている服も、みな修からの借りものだ。背格好が似ていると前からよく言われていたのが、こんな形で幸いするとは思ってもみなかった。
「顔が険しいね、何かあった?」
修が僕の脱いだ服をハンガーにかけながら聞いた。
「ああ、見つかりそうになって、慌てて逃げてきた」
修は眉をひそめる。
「あんまり無理するなよ。いつまでもここにいていいんだから」
「でも、ずっと手をこまねいている訳にはいかないよ」
僕は答えた。
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