君がいるから

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 俺が眠った後も、彼女は色々しているようだった。衣服の修繕(しゅうぜん)や翌日の仕事の準備などだ。  それでも翌日、俺が目を覚ますころには、彼女はいつの間にか起きている。 「おはようございます、拓馬様。朝食の準備ができていますよ」  相変わらず無言で朝食を食べ始める俺に気にした様子もなく、彼女は「今日はいい天気ですね」とか「寝ぐせついてますよ」と、色々と話しかけてきてくれる。特に朝は彼女はおしゃべりだった。  そしてすぐに俺の昼食の準備をして、仕事へ出かけてしまう。 「それでは、行ってきますね」  そうして家から出ていく彼女を見て、俺はいつも寂しい気持ちになる。寂しい気持ちになるくらいなら、家でもっと話したり、いってらっしゃいの一言を口に出せばいいのに、それでも俺は彼女に対して口を開けないでいた。  本当はこんな生活は間違っていると気付いていた。彼女に頼りっきりのことも、彼女に感謝の気持ちを伝えずにいることも。だけど間違っていると気付いていても、俺はそんな生活を繰り返してしまうのだ。今日も明日も明後日(あさって)も。たぶん。俺か彼女のどちらかがやめてしまうまで。
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