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俺は哲雄にとってなんなの? 一緒に暮らそうってそっちから言ってきたくせに。 優しい気遣いもなし。キスもエッチもなし。ただ一緒の家に住んでるだけ。勝手に俺のタピオカミルクプリン食うし。 「浮気されても文句言えねーっつの」 ベッドにどさりと体を投げ出して、天井から下がるお手製の幾何学模様のモビールをぼんやり見つめた。 小さな脚立に乗ってこれをここに吊るした日。 『やっぱ夏希はすごい。こんなの作れるなんてさ』 『大袈裟だなぁ』 『綺麗だし。オシャレだし。俺、自慢なんだぜ?誰でも彼でも言えるわけじゃねぇけど』 優しいキスと、一緒に暮らし始めた頃のまだソワソワしていた気持ちを思い出す。 懐かしくて……ちょっと切ない。 あの頃の俺は、哲雄とならずっとやっていけると信じて疑わなかった。 俺の周りにはたった1人とずっとうまくいってるヤツなんか数える程で、直接の知り合いって言ったら1組しか知らなかったけど……それでも俺たちは大丈夫だと思ってた。いや、実際うまくやってたんだ。半年くらい前までは。 でも今は……ときめきのない日々が、俺の恋心の息の根を完全に止めようとしてる。 恋が死んだら……俺たちはどうなるの? 一緒にいる意味はある? それならもう……終わらせた方がいいんじゃねえの…… 手慰みにスマホを手に取れば、新しいラインの着信が数件……その中に、最近熱心にアプローチしてくる同業の元カレの名前があった。 松下(まつした)友郎(ともろう)は美大の同期で、大学を出てから付き合いだした。浮気性に疲れて別れたものの不思議な愛嬌のある男で、今でも時々飲みに行ったりしてる。 ぐらついてる訳じゃない。ヨリを戻す気はないんだけど……でも、このままじゃ俺、ほんとにダメになりそうだよ哲雄。 それでもいい? あの俳優がいれば、十分なわけ? ふと、つらつらと続く考え事に廊下の足音が紛れ込む。 哲雄が謝りに来た?っていう浅はかな期待が瞬間的に生まれて、でもすぐトイレだって分かってガッカリ度は2倍。勝手に期待したくせにさ。 そう……もうそろそろ本気で限界なんだよ。 哲雄は平気なの?
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