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日が暮れても寒くはなくなってきた4月の終わりの歩道を、ぼんやりしながら駅に向かって歩いた。 隣で友郎がどうでもいいことを楽しげに喋ってるのを聞き流しながら、哲雄と俺の終わりを迎えようとしてる未来を思う。 俺は哲雄にとって何なの……本当は別れたいのに、自分から一緒に暮らそうって言ったから、言い出せなかった……? ちゃんと話をしなさい、と言ったシゲさんの優しい目を思い出したけど、いざとなったら俺は勇気が持てなかった。 勇気、なんて。 おかしな話だ。このまま惰性で関係を続けるなら終わらせればいいって思ってたはずなのに。 「友郎……次行くぞ……」 「あー?まじで?いいけどさぁー岡ちゃんに怒られっぞ、バレたら」 「嫌ならいい。俺一人で行く……」 「嫌なわけねーじゃん!いくいく~!」 友郎にもたれ掛かるように肩を組んで、別の店に行って……こんな飲み方をするのは学生時代以来だってくらい飲んで…… 途中からはまるで映画の回想シーンのような朧気な視界に、意味をなさない間遠な音声がいくつも紛れ込んだ。 ブーンブーンと震えているスマホのディスプレイに、哲雄の名前 どうすればいいのか思い出せなくてぼんやりと画面を見てる 友郎が俺から電話を取り上げて、判別のつかない言葉を喋ってる 見たことがあるようなないようなどこかの店のボックス席に寝転んで、悲しいわけじゃないのに泣いていた。 「まったく、岡ちゃんの呪いだな。軽蔑されたくねーし」 近いような遠いような友郎の声 キスくらいさせろ、と覆いかぶさってきた友郎が感覚が鈍くなった唇に深く入り込んできたけど、驚いたことに、知り尽くしているはずのそのキスはまるで俺の中に響かなかった。 かつては俺に火をつけひどく煽ったのに、今はただよそよそしい感覚のする接触でしか無い。 それは悲しみだ。 求める温みはこれじゃないと身に染みて分かった所で、その欠けを埋めることは出来ないんだから。
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