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―何故私は、こう無力なんだろう・・・。  ステラはコロシアムの様子を見て、顔面を蒼白させていた。彼女から見ても、この魔物にリーディ達が勝てると思えなかったのだ。 ―せめて、私が武器を持っていたら・・・!! 「ステラ殿、大丈夫か?顔色が大層悪い・・・」 キースの従者アレイクサーが心配そうに覗きこむ。 「だ、大丈夫です・・・。」  ステラは気をしっかり持ち直して、口元の手を降ろし拳を握りしめた。  ステラ達が居る場所はコロシアムに面した一階の袖だ。もし彼女が武器を手にしていたら、即座にコロシアムに躍り出ていただろう。  でも今行ったところで・・・・。 葛藤が、彼女の足を踏み留めようとする。 ―でも、でも・・・。 気が昂ぶり、彼女の身体がうっすら光帯びる。マレフィックスの能力が発動している・・・。 「ステラ殿!!」 訝しげに声をかけるアレイクサーの言葉を余所に、瞬間たまらずに彼女はコロシアムへの出入り口に向かって走り出してた。 ☆☆☆  他の隊の従者や侍女もその袖で待機し、様子を窺っていた。ステラは構わず走っていたのだが、 「待って。どこへ行くの??」 そう、聴きなれた声は、 「キャロル・・・。」 穏やかだけど、意志の堅い声色。 キャロルは気が付いていた、ステラが何をしようとしているのかを。身体がうっすら光帯びている、キャロルが一番心配していることだ。 「ダメよ、武器も持っていないのに。」 「・・・わかってる。でも私は見過ごせない。それにこの能力があれば・・・。」  拳を今度は力強く握りしめて、ステラは毅然とキャロルを見据える。  やはり、ステラはトルデォンを放つつもりだ。だけど、いくら滋養薬があると言えども、実行したら彼女の身体に確実に負担がかかり、命も縮めるのは確実だ。 キャロルはステラの両腕を掴んだ。 「・・・思い留まって・・・」 「・・・。」 二人は無言で、見つめ合っていた。 ☆☆☆  リーディはユリエルのもとに行き、事情を話した。  ユリエルは驚いた。膠着戦にならざるを得ないこの彼から告げられた作戦、それはとにかく隊員全員レグルスから逃げて、レグルスを疲れさせて体力を削ぐことである。 「自分はこの類の毒を受けたことがある・・・。身体全体に毒が回ると徐々に麻痺して、昏睡状態に陥る。」と。  ユリエルは、かつての級友に似ているこの彼の申し出に戸惑ったのだが・・・彼の決死な瞳を見ると、とてもじゃないけど拒めなかった。 そしてユリエルは隊全体に命じた。 「全隊員、積極的攻撃態勢を解除。防御に徹し、対象を観察せよ!!」 作戦は決行された。 「まずは負傷だけは、避けよ!」  カルサイト第四番隊は総勢20名ほど。皆防御の構えでレグルスの様子を見守った。  レグルスは唸りながら隊に突進してきたが防御に徹してる騎士達には、その攻撃は通用せず。 グルルルルルルル・・・。  地面を蹴り飛び上がり、レグルスは牙を剥いて隊に襲い掛かってくるが、それを皆避けては構え直し、レグルスの牙や爪で負傷しないように細心の注意を払っていた。 ―よし、この調子で行けば、こいつも体力を消耗し弱ってゆくだろう・・・。弱ったら反撃開始だ。  リーディは周りに気が付かれないように隊全体の防御力を強化する呪文を唱え、レイピアを握りしめる。 ―あと、もう少しの辛抱だ・・・!!
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