32人が本棚に入れています
本棚に追加
しあわせの音が降る(1)
不均一に模造された階段。
随分と伸びた草木が顔をくすぐる。
立ち止まって目を閉じてみたくなる。
ここにはわたしの知らないものがたくさんあった。
わたしの知らない匂いがたくさんした。
そしてそれは、今もまだここに残ってわたしの心臓を揺らしてくれる。
日に照らされた土の匂い。
ゆるりとした風がはこんでくる匂い。
その中に混じって、わたしの大好きな香りがする。
たぶんそれはわたしがここに立っていることを、あの人はもう分かっているからなのだと思う。
最初のコメントを投稿しよう!