しあわせの音が降る(1)

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しあわせの音が降る(1)

 不均一に模造された階段。  随分と伸びた草木が顔をくすぐる。  立ち止まって目を閉じてみたくなる。  ここにはわたしの知らないものがたくさんあった。  わたしの知らない匂いがたくさんした。  そしてそれは、今もまだここに残ってわたしの心臓を揺らしてくれる。  日に照らされた土の匂い。  ゆるりとした風がはこんでくる匂い。  その中に混じって、わたしの大好きな香りがする。    たぶんそれはわたしがここに立っていることを、あの人はもう分かっているからなのだと思う。
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