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扉を開けたのはプレジオンだった。 「そなたは…グレインの…!!」 「王の御前であられるぞ!」 隊長たちが次々と諌める。しかし王が口を開いた。 「グレインの従者よ…。何があった?」  普段なら追い出すところであったが、ベルヴァンド王は自分自身が数年も操られていたので、今回ばかりはこの従者の話を聞こうと思ったのだ。 「今…我が上官であるグレイン隊長の祈祷をしている侍女殿が、急きょ仲間である侵入者たちを呼んできて欲しいと…。」 「何故だ?」 プレジオンは少し間をおいて答えた。 「彼を助けたいと…そのためには時間がないし、すぐに仲間を呼んできて欲しいと。」 何も状況を知らないものからしたら不信極まりない。再びその場が騒然とする。 王は再度この侵入者たちを見据えた。  まずは勇者と呼ばれた娘を一瞥する。 口数が少ないこの娘は、意志はかなり強そうだとみられた。自身が疑いの言葉を彼女にかけようとも、彼女は怯まずに王をしっかり見つめていた。  そして、エジットの忘れ形見である王子が、彼女を支えるように手を繋ぎ同じくこちらを見つめている。 ―我が娘も、傍らにいる茶色の頭髪の青年も同様に・・・。 彼らから感じるものは、確固たる「信念」だ。 いくら回りが騒然としようとも、怯まずにただ・・・それを貫かんとする・・・。 「・・・承知した。」 思わず出た王の了承の言葉に。カルサイトの騎士たちは、戸惑うような面持ちをした。 「しかし・・・王!」 案の定カルサイトの一人が反論したが、それを遮るようにベルヴァンド王は叫んだ。 「この者たちに一度委ねてみよう…。その後処分を考える。」 ★ ★ ★  プレジオンに連れられて、ステラ達は遺体安置がされてある部屋へ通された。  祭壇の下で祈るキャロル。そこにはすっかり血の気が引いたグレインの姿があった。 「キャロル…!」  ステラが声をかけると、彼女は眼を開き皆を迎えた。 「・・・プレジオン、ありがとう。みんな来てくれたのね・・・。ただ時間がないのよ。 魔力があるステラとリーディとコウは、私と繋がってほしいの。」 「繋がるって?」 「ああ・・・要は魔力を分けるってことか。」 リーディが心得たように頷いた。 「ええ、リーディ、そうなの。私は今からオベロン様から与かった蘇生の力を使おうと思うの。でも流石に・・・私だけの魔力だと足りないのよ。だから魔力が少しでもある人に協力願いたいわ。」 キャロルが厳かな調子で言う。 「とにかく、一刻の猶予を争うの。肉体はどんどん朽ちていくし・・・一人でも多くの人に魔力を分けて欲しいくらいだわ。」 「僕でも??」 コウが少し神妙な面持ちでキャロルに問う。彼は魔法は得意ではないが、少しは使えるくらいの力量であった。 「ええ・・・掻き集めてでも。」 するとメイがすぐに機転を利かせてこう彼女に言った。 「わかった。私はそれに協力はできないけど、(魔力がないので)カルサイトのおっさん達の中から魔法を使えるものを探してくるよ!」 「頼んだわ、メイ。さぁほかの皆は、私と一緒に祈って!」 キャロルがそう促したので、残った三人は指示に従い、まるでグレインを取り囲むように 祈った。 しばらくして、カルサイト第二番隊隊長キース・グラヴィーと、第四番隊隊長ユリエル隊長がやってきた。  メイが王に頼んで手配した二人の隊長らはほんの少しだが魔力を持っていたのだ。  キースは一瞬ステラを見るとすぐに目をそらす。 ―ああ、やっぱり彼は、私の覚醒した姿を見て、何か悪い意味で思うことがあるのだなとステラは感じた。 しかし今はそれどころではない。 集められた皆で、グレインをこの世に呼び戻さなければならない。実際に彷徨う魂を呼び止めて肉体に戻すことはキャロルが執り行うのだが、失敗は許されない。 ここにいる全員での、決死の挑戦が始まった。
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