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 第四番隊隊長ユリエル・レノーは不可解に思いながらもキースと共にグレインが安置されている部屋へ急いだ。  キースの顔が少し憔悴している。自分もだが部下が侵入者だったからか。  そう、自分もカルサイトの見習いがかつての旧友の息子であったように・・・。 ベルヴァンド王のご落胤も、元部下だったエジットの息子王子も、キースの侍女も持っているというペンダント。  そう考えながら部屋に入ると、皆が一堂に会していた。そしてエジットの息子王子と目が合う。王子は丁重に会釈をした。 黙っていて済まなかったといわんばかりに。  キャロルの指示通り、グレインの周りを取り囲むと、彼女から言われた言葉は・・・ ―「ただ一心に、グレインがこの世に戻ってくることだけを祈ってほしい」―とのことだった。  キャロル自身、皆の祈りが一つになる瞬間を待っていた。簡単に言えば、波長が一致する僅かな適時というのか。キャロルは辛抱強く待った。その瞬間を。失敗は許されない。 一度のみしか使えないこの能力…。 それもその筈。なぜなら生命の理を例外的に覆すことだからだ。 ステラも、リーディもコウも・・・二人の隊長らも額に汗をかきながら必死に祈る。キャロルはもう全力を尽くすしかないと腹を括って皆からの魔力を集結させた。 ☆ ☆ ☆  それから・・・どのくらいの時間が経っただろうか・・・。  祭壇で煌々と燃えていた蝋燭の長さもだいぶ短くなり・・・こう考えたくはなかったのだが、グレインの復活のタイムリミットが差し迫っているようだ。  ステラは何も根拠はないと言えども、この蝋燭が全部溶けてしまう前にグレインを蘇生することが不可能ならば、後がないのではと一瞬思ってしまった。しかし彼女はすぐにその後ろ向きな考えを振り切った。 ―キャロルを、授かった力を信じなくちゃ・・・。   そう考えなおした時だった。 ステラはうっすら淡い光の玉を見た。 それはふらふらと彷徨いながら、何かを目指している。 何だろうか? するとキャロルが、静かに言葉を発した。 「ここがあなたの帰る肉体(場所)。まだあなたは、終わってはいけないの。」 その抑揚は静かだが力強くなってゆく。 「御霊よ…グレインの御霊よ。全妖精・精霊のご加護のもとに再び呼び戻されたもう・・・。」 すると淡い光の玉はグレインの胸の前までふわりと移動をし、水が大地に染み入るが如く すぅっと彼の身体に入っていった・・・。 祈りは、届いたのか、 グレインが目を覚ました。 固く閉じられた瞼がかすかに動き、巨体がゆっくり起き上がろうとしているが、丸一日以上寝ていたせいなのか、あるいは、死後硬直しかけていたせいなのか、巧く身体が動かせないらしい。 気が付いた2人の隊長が起き上がらせるのを手伝う。 「私は・・・?」 乾いた唇が、言葉を紡いだ。 ―生き返った!!! 「とりあえず、水を」 「その前に医務室へ」 ステラが、皆が喜ぶよりも驚きが先に来て、その様子を呆然と見つめた。 キャロルはほっとした面持ちで額の汗を拭った。しかし顔色は優れない。 「キャロル」 リーディがすぐにそんな彼女の様子に気が付いて、壁際にあった椅子に彼女を腰掛けさせる。 「うまくいったようだな・・・。」 「ええ。」 キャロルは少し満足げにほほ笑んだ。 ステラもコウも駆け寄ってキャロルを労う。 蝋燭の灯はすでに消えていたが、再び仲間たちの中に灯が宿ったようだった。
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