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あれから…
グレイン隊長は医務室に運ばれて、
私たちの取り調べも、一日おいてからと人道的な処遇を受けた。グレイン隊長を蘇生した恩赦も含まれているという。
あてがわれた客室は二つで男女に分かれていた。メイは再び王に呼ばれている。
まだ休む時間には早いので
私たち仲間4人で一つの部屋に集まった。メイとコウと共に
コロシアムに侵入したキリアンという商人とダンという志願兵も一緒だ。
「ともあれ、グレイン隊長が無事に蘇生してよかったわ・・・。」
キャロルは少し疲れた表情でつぶやいたので皆頷いた。まさか妖精の長からそんな力を授かっていたなんて。
もし授かっていなかったら・・・もしくはそれが成功していなかったと思うとぞっとする。
「…キャロル、少し休んだ方がいいかも。」
私は心配になってそう声をかけた。
「そのとおりだ、蘇生の呪文なんて、回復より遥かに身体にくるだろう。」
「休みなよ。」
皆にも促されて、キャロルは部屋のベッドに横になる。しばらくして静かな寝息が聞こえてきて私たちはは胸を撫でおろした。
「ところでコウは、どうやってメイ達と合流したんだ?」
リーディがコウに訊いた。
確かに城に別々に忍び込んでから、ずいぶん経っていたけれど。
一体どうやって?
コウは静かにその経緯を話した。
「僕とダンが夜中に詰め所を抜け出して、秘密の竪穴に侵入したら、あのレグルスのような
怪物が次々と志願兵を屠っているのを見てしまい、案の定見張りの兵に見付かって必死に逃げたんだ・・・。」
で、その後どうなったのかというと、
二人は逃げて、追っ手を眩ませたと思ったら、別の見回りの兵士に捕えられた。
今度こそ万事休すと思ったらなんとダンの故郷の知り合いだったのだ。
その知り合いの兵士は機転を利かせて二人を匿ってから、別の部隊で目立たないところへ忍び込ませた。それが武器を管理する裏方の部隊だ。
そこで二人は数週間、潜伏していたというわけだ。執拗な捜索にヒヤッとしたこともあったがその都度コウが知恵を絞ってうまく捜査の目をかいくぐってきた。
「んー僕が地味なキャラで幸いしたよwリーみたいな目立つタイプだったら即アウトだったかも。レグルスの餌になっていたかもねーww」
「おい・・・自虐含めた俺に対する嫌味か??」
久しぶりの二人のやり取りに私はクスリと笑っちゃった。ああ・・・ずっと緊張の日々だったし、まだ心に引っ掛かることはたくさんあるけれど私は少しほっとした。
「そして・・・?」
「おう、武具の管理をしていたら、新しい武具が入荷されるって出迎えてみたら、
コウと似ても似つかねぇ艶やかなねぇちゃんと、そこの伊達男が来てたってわけだ。」
「まさかここに、エストリアギルドの有名な職人がいたとはねぇ・・・。」
得意げに話すダンと、
意味ありげな笑みを浮かべるキリアン。
コウはそれを見て少し怪訝そうな表情をした。
「もちろん今回のメイのベルヴァンドへの侵入幇助は交換条件ありだから。君にも関係してくるよ?」
「だろうと思った。」
コウはため息をついた。
「君のことだからきっと僕に依頼をするんだろうと。」
「まぁね。僕は商人だから。ま、落ち着いたらおいおい。」
どうやらこのキリアンとコウは、少しだけ面識があったみたいだ。
そしてだいぶ端折って話を戻すと、
合流した4人はタイミングを見計らってコロシアムに侵入したらしい。
一通り聞き終わるとリーディが納得したような面持ちで息を吐く。
「俺も初めてカルサイトに入ったけれど、父上がこういうところで働いていたとは
不思議な気分だった。」
そうよ・・・リーは偽名使っていたから・・・。
「だから最初カルサイトに新入りが入ったと聞いた時も、どこの隊に所属になったのかわからなかったのよ」
「仕方がない。あの場で正体が暴かれたら話がややこしくなるだけだったしな。」
ホント八割方うまく収まったかに見えたけど
私たちの処分はまだだし、それに・・・。
「まさかね、姉さんが・・・あのベルヴァンド王の・・・」
「娘だったとはな・・・。」
私と同じで見たことのない父親を捜していたメイ。ようやく偶然にも巡り会えた
今、どんな気持ちなのだろうか・・・。ここでは色々なつながりが露呈されたわけだけど、それぞれの事柄がすっきり解決するまでは、すごく時間がかかるだろう。
そう。私だって気になることがある。キース隊長がかつてのリストンパークの兵士で
母さんに仕えていたこと、そして私のマレフィックの力が覚醒した時から私に対する態度がおかしいということだ。
一度キース隊長と話をしたい・・・。でもこの混乱の中、無理な気もする・・・。
それに、あのオッドアイの魔性。私と同じマレフィック・ミックスだと言った。
そして憎き従兄弟―魔性リスナー―のことを知っていた。あいつは一体何者なんだろう…そしてリスナーは今どこに??
あとは…キャロルのコロシアムでの必死な態度。なにか隠されている?
私は再び考え込んでしまった。
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