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6
メイは再びベルヴァンド王に呼び出されて
話をしていた。
まずはペンダントの謎。
ベルヴァンド王もベルヴァンドに代々伝わるペンダントということを除いて、何も知らないのだ。後を継ぐ者が現れたら光るということ以外は。
「そなたが生まれたときに緋色の光を放って光ったのだ…。」
「母さんから聞いたよ。」
ベルヴァンド王は今度は落ち着いてメイに母と出会った経緯を話してくれた。
あの日、リストンパークの城で大きな会議がありその帰りに気まぐれに城下に赴いたら、野外で踊っている芸妓がいて一瞬で心を奪われたと。
それから王は城下の芸妓の住む所へ足繁く通ってミレイを口説き落とした。正妻は病に伏しており先が長くはなく、その一人息子である王子もとても病弱で、王も王子自身が
継承者には向いていないと思っていた。
ここまで聞いてメイはこう尋ねた。
「ベルヴァンド王。」
「なんだ?」
「王は正室さんを愛していたんでしょう?」
「・・・そうだな。妻としてだ。務めとして男児も産んでくれたしな。」
「でも母さんに心奪われたと・・・。」
「そうだ。」
確かに人の好きになる気持ちは理屈で抑えられない…。しかしメイは腑に落ちなかった。
「ただ愚息にはこの軍事国家を束ねる力量は残念ながらないのだ…。だからそなたに後を継いでもらいたいと。」
「それは受けられないよ。さっきも言った通り、第一母はここに嫁ぐことを断っているし、あたしもエストリアで育った芸妓のメイってことは変えられない。それに…。」
メイは戸惑うベルヴァンド王の面差をまっすぐ見つめて言った。
「本物の父を探していたのは本当で。けれども本懐を遂げてすっきりしているよ。で、今、一つだけ気が付いたことがあった。それはあたしの父は、 本当のところ 亡くなるまで育ててくれた、エストリア一の職人カイ ドゥモーグだけだって。」
「・・・。」
二人は無言でただただ見つめ合った。
たった数分のことだがとても気の遠くなるような長さであった。
そして先にメイが口を開いた。
「でもって、あたしが生まれた時にこのペンダントが光ったことは、イコールこの国の後継者とは限らないんだ。もっともっとこの世界の根本を揺るがす何かを、危機を止めなければならないのよ。そのためにあたしの方が選ばれたに過ぎない。」
「・・・。」
「したがってあたしはここに残って あなたの後を継いで旅をやめるわけにはいかない。もう一国家の問題だけじゃないんだよ。旅立った当初は、自分のルーツ探しと弟のためと好奇心もあったけどさ…今は違うの。今自分のルーツがわかったせいかもしれないけど・・・仲間たちと一緒に得体のしれない脅威に挑みたいんだ。」
王は娘の自分と同じである黒曜石のような瞳で、決死の視線で見つめられ、圧倒されていた。彼女の覚悟は、伝わってくる。
「王子である兄さんのことを、最初からダメだと決めつけていない?相手を信頼すれば、その相手も変わることできるんだよ。相手が 自己信頼ができてなくてもね。あたしは今までの旅で仲間たちからそれを学んだ。
王よ、あたしを娘として愛しているのなら、あたしの、そしてあたしの仲間たちの本懐を遂げることを応援して欲しい。あたしが言いたかったことは以上です。」
最後にメイは一礼して、踵を返して去った。
☆☆☆
一方で。
ステラ達は・・・。
しばらくの後、夜になって、更にめいめいに個室をあてがってもらった。いわゆる軟禁状態と言えども・・・待遇はよかった。
メイが戻ってくるのと入れ替わりにステラが部屋を出て行った。仲間たちは怪訝そうな顔で彼女を呼び止めたが。
「今しか、動ける時間がなくて・・・お願い。」
そう言った。
その時に戻ってきたメイだけが、
「行ってきなよ、何か思うところがあるのなら。」
そう背中を押したのだ。
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