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その2
剣崎
「どうやらクスリは、そう心配しなくてよさそうです。あの子、意外と自己調節がうまいようですね」
「そうか…。お前の見立てなら間違いないだろ。まあ、いろいろ忙しいのに悪いが、麻衣は会長からの大切な預かりものだ。今後も頼む」
「わかりました」
「ふふ…、それにメインの付きが倉橋から他ってなったら、麻衣はむくれるだろうしな」
「どういうこってすか?」
「麻衣は倉橋に偉く懐いてるからよう」
「えっ…、そうなんすか?」
コイツ…
こういうところは、ひどく鈍感だからな(苦笑)
...
「能勢や勝田にも何かと撲殺人のことを聞きまくってるそうだしな。もう何でも知ってるぞ、お前のこと…」
「西城の件も…、ですか?」
「おそらくな。カンも鋭いし、聞きかじったことで全体を探り当ててしまう能力があるようだ。西城アツシのことは麻衣もかなり関心を抱いてる。だが、”例の子”とのことはまだ知り得てないだろう。ただ、何となく二人の関係も頭にチラついてるってのは、あるかも知れない」
「言っといてやった方がいいんですかね、麻衣ちゃんには…」
「そうだな…。いずれわかるんなら、倉橋から告げてやった方がいいかも知れない」
「…」
倉橋はやや抵抗があるみたいだ…
「…お前、麻衣に北田久美とかって子と、麻衣からしたら”他でもない”西城がくっついてることを話したら、どういう反応を示すかわかるってのか?」
「ええ、だいたいは想像つきます」
だが結局、倉橋は麻衣に全部を話したようだ
...
「…そうか、西城にケジメをとな…」
「…かなりムキなっていましたよ。”若の時”は、親友を最後までヤッたのに、ヤツだけ組のモンじゃなかったから指が無事だった。許せないと。珍しく顔を赤くして興奮していました。なら、今度は組員になったんだから、何かやらかせば処罰して欲しいと…」
倉橋は麻衣に自分の心情も告げちまったらしいわ
”自分も麻衣ちゃんと同じ気持ちだ。ヤツは許さない。いずれ何かの折にはしっかりけじめをつけてやる”と…
何のことはない…
倉橋と麻衣は、共同作業を誓い合ったってことだ
これがこの後、二人が婚約して麻衣が事実上相和会の人間となってからも続いた、倉橋と麻衣が共に遂行した最初の”仕事”となる訳か…
ふふ…
麻衣は倉橋の首の火傷痕から惚れたってことになってるが、今振り返ると、どうやら麻衣が倉橋に惹かれた原点は、撲殺人の”仕事”に対する姿勢、その仕事ぶりだったんだろうと思えてならないよ(苦笑)…
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