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day4’
病室の扉をそっと開ける。
「ママ!」
ベットの上で折り紙をしているマユミがにこやかにこちらを振り向いた。
「無事でよかった」
駆け寄り、力いっぱい右腕でマユミを抱きしめた。
「ママ、パパは?」
キィ、後ろでタイヤと床が擦れる音がした。
「マユミ、」
「パパ!」
マユミはパタパタとベットを降りてヒロに抱きつく。おいおい転ぶぞ、言いながらヒロが手をだし、マユミを支える。
「アスカ、よかった無事で」
「ヒロ、」
私は車椅子のヒロに寄り添った。
「あんな事故だったのに右脚の骨折で済んだんだ。不幸中の幸いだったよ」
「よかった、本当に」
よかった、マユミがいるのにぼろぼろと涙が溢れた。
「ママ、左手痛いの?」
マユミがそっと私の左腕のギブスを撫でる。
「大丈夫、大丈夫よ」
「これから大変かもしれないけど、パパとママが頑張るからな。マユミ、今日はよく寝て明日から元気になるぞ」
「うん!」
えいえいおーと3人で拳をあげる。どんなときも幸せな時間を。これからも3人でつくっていこう。そんな気持ちを拳に込めて。
・
今日はお昼から3人で公園にいった。掃除をしようと思っていたのに、出かける二人を見送るときに急に付いて行きたくなったのだ。
「きゃあああああ」
「危ない!」
閑静な公園に、1台の自動車が突っ込んできた。逃げる距離はなかった。
思わずマユミを抱きしめ、ヒロがさらにかばうように私を抱え込んだとき、走馬灯が見えた。もう死ぬんだと思った。
――ここは、病院?
ぼんやりと、映像が移ろっていく。
ああ、これは集中治療室で人工呼吸器とチューブに繋がれているヒロだ。
――そうだ、ヒロ、私は時間を……
ドン、と強い衝撃に身を打たれ、辺りは真っ暗になった。微かな光が射してきて、瞼を開けて見た先は、既に病院の天井だった。
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