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アスカに言われてヒロもよくよく商品を見たようだった。
胡散臭い名前だった。
「『幸せをあなたに。お好みの時間に巻き戻します』? 時計だよね、これ」
「そう思ったんだけど」
――ピコン
アスカのスマホに一通のメッセージが届いた。
「出品者からだ、ちょっと開くぞ」
『平井アスカ様
この度は私の商品をご購入いただきありがとうございます。つきましては商品の説明をさせていただきます。』
「こんなメッセージがすぐくるんだね」
「悪い、名前適当に入れた」
「いいよ、どうせすぐ解約するし」
自分名義ではないことに少しほっとした。口座も電子マネーみたいだし、まあいいか。
メッセージについている商品説明動画を起動すると、宇宙のような映像と、女性の音声が流れた。
『今回平井様にご購入いただいたのは、世にも珍しい”時間の巻き戻しβ版”です。』
「なに、モニターってこと?」
思わず前のめりになり、ヒロの肩に手を乗せる。
『このβ版は本来ならば無料でお渡しするものなのですが、ある程度の篩い分けのためにオークションへ出品致しました。』
「篩い分け」
ヒロがオウム返しをした。
『平井様には時間を巻き戻す権利が与えられます。まず、ご信用いただくため、戻りたい時間を今から3分以内にマイクに向かって呟いてください。』
ブチッと音声が途切れ、3分のタイマーが画面に起動した。
「ちょっと、私のスマホ、この人に乗っ取られたりしないよね?」
「たぶん、でも画面が動かない…」
「いやいや、ちょっと貸して」
ヒロが握っていた自分のスマホを取り上げ、電源ボタンを押すもびくともしない。
「うそ、これやばいんじゃない」
「マジでごめんアスカ、とりあえずマイクに向かって何か言ったら動くようになるかも」
「じゃあお願い」
スマホを渡し、両手で口元を覆うようにしてヒロの行動を見守る。
「俺がさっき部屋でゲームに負けたとき!」
そう言いきったと同時にタイマーが0をさし、画面が真っ暗になった。
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