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day3、幸せ
秋が来た。
今日は残ったセミがジリジリ唸っている。とりあえず夏が終わったと言えるような、気怠い日が続いていた。
「ヒロ、この段ボール開けていいの?」
「あー待って、それは書斎用だから開けないで!」
「あーい」
あの後、怖がっていたアスカを守るように生活していた。
吊り橋効果というのだろうか。自然と男女の関係になり、2年間を経て籍をいれた。
俺にとっては結果的にあのオークションアプリは良い未来をくれたのだ。
「疲れたから少し寝るね」
アスカは届いたばかりのソファで横になった。残暑がきつかったからだろうか、顔色のよくない日が多く心配している。
出したばかりのブランケットをアスカにそっと掛け、山積みになった荷物を見渡す。あと少しだけ頑張ろう、と書斎の片付けに向かった。
先ほど開けるなと言った段ボール。そこにはあのときのマイクが入っている。
――不思議と捨てられないんだよな。
あの後、登録した口座から300円は引き落とされていなかった。使わないと引き落とされないのだろうか、そう軽く考えていた。
俺はマイクの箱をそっと棚の奥にしまい込んだ。
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