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day4
「おめでとうございます」
新居に引っ越して1カ月後、私とヒロは子どもを授かった。
つわりは少しひどかったが、つられて具合の悪くなってしまうヒロをみて、ありきたりだけれど、この人が生まれてくる子どもの父親でよかったと思った。
・
「平井さん、頑張りましたね、女の子ですよ」
予定日より少し早く、娘は生まれた。
出産にヒロは立ち会えなかったけれど、病室で私と娘を見てわんわん泣いていた。
娘の名前はマユミにした。
生まれる前に二人で何度も考えて候補を挙げたのに、娘を抱いた瞬間にぴったり決まってしまったのだ。
両親も、義両親も、マユミをたくさんかわいがってくれた。
ヒロはもうマユミをみると目尻も口元もでれりと下がってしまう。結婚直前の私が見たら確実に妬いてしまう、だらしない溺愛ぶりだ。
そんな幸せな日々が5年ほど続いた日だった。
・
「行ってきまーす!」
「いってきまーす!」
今日はヒロの仕事が休みで、5歳になったマユミはパパと一緒に公園に行くのだときかなかった。
「気をつけてね」
バタン、とドアが閉まる。
ヒロはマンションでも評判になるくらい子育てに積極的だ。ドア越しにケラケラ笑う二人の声が聞こえて遠ざかっていく。
「よし、」
今日は書斎を掃除しよう。昨日入っていいかと確認したら
「床と本棚だけな」
そう念を押された。
とはいえ本の上には埃も厚さを増していて、順番を変えなければ大丈夫だろうと一冊づつ埃を払っていた。
「ん?」
最後の棚を掃除しているときだった。中の本を取り出し、棚を掃除していると、奥から小さな箱が出てきた。
「これってまさか、」
ドクンと心臓が大きく脈うつのがわかった。
――うそだ、あのときヒロは警察に届けたって
おそるおそるほこりを払い、蓋を開けようとしたとき、
リビングの固定電話が鳴り響いた。
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