4人が本棚に入れています
本棚に追加
魔王×人間 (現代版)
俺は十人兄妹の末っ子だ。
兄、姉、兄、姉、兄・兄、姉、姉、兄、俺の順だ。
三男と四男は一卵性双子で、寝惚けてたら俺でも間違うくらいそっくりである。
既婚者は十人中七人。
三女と五男(俺のすぐ上の兄)と俺が未婚だ。
俺まだ大学生だし。
両親や他の兄、姉に甘やかさせて、穏やかに生活していた俺。
ある日、突然に、その生活は濃さを増す。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日、俺は一人カラオケ後に一人居酒屋という休日を過ごし、時間は夜中の午前三時。
終電も終わっている無人の駅に向かった。
その駅にはガチャポンがあって、今現在、とてつもなくガチャポンをしたい気分だから。
一人で静かな駅を歩き、目的のガチャポンを見つけた。
十種類ほどと少なめな中で、その一機種に三百円を入れた。
「さぁさぁさぁ!!やって参りましたガチャポンTime!!三百円で手に入るのは洛山チームの誰かッ!!俺としては赤司様を指名したい!!!」
一人居酒屋で完全にデキ上がってた俺は、ガチャポンの前でジョジョ立ちをしながら叫ぶ。
既に二十一歳という、自称永遠の二十一を語る折原さんと同年にも関わらず、コイツ何言ってんだ?と日中なら白い目で見られる事確実な事案。
しかし今現在は午前三時。
周囲には白い目で見る人も、咎める人物も残念ながら居ない。
このまま叫び続ければ警察には会えるだろうが。
「赤司様でなければ第二の影でも良い!!さぁ!俺の下に降臨せよ!!」
やはり警察に真っ先に対面しそうである。
両手を勢いよく広げて駅の天井を仰ぐ。
そしてそのまま目を閉じて数分間の瞑想。
この場合は思考の“迷走”の方が正しいかもしれない。
そして、この時点で三百円を投入して十分経過している。
しかし、酔っ払いの俺にその判断能力は無い。
「さぁっ!!let's パァァァァァァァァァァァァリrrrrrrrrrrrrrrrrィィィィィィッッッ!!!!」
そう腹の底から叫んでしゃがみ込み、ガガガッとノブを回す。
ノブが一周して、ついにガチャポンが落ちてくる。
ーーーカタンッ
ーーードサッ
プラスチック同士のぶつかる音は聞き慣れている。
しかし、その音と全く同時、背後で重たい何かが地面に落ちる音がした。
「誰だ!?誰だ!?誰だぁぁぁぁっ!!!」
だが、流石酔っ払い。
そんな事気にも留めず、落ちて来たカプセルを取り出す。
「赤いカプセル!!コレで大将が出たら大勝利間違いナシっ!!!」
独り言の絶えない酔っ払いは、ハイテンションのままカプセルを開けて……
「………ゴリラかよコンチクショォォォ!!!」
視界に入ってきた黒い肌のキャラにカプセルを閉じて封印、自分の後方へ振り返りながら全力投球した。
赤いカプセルは勢いよく後方の地面にあった黒い塊にぶつかった。
「……………?」
一瞬、あんなゴミあったか?と酔った頭が判断に迷い……、その間にゴソリ…と一度だけ塊が動いた。
その光景を見た正常な思考と判断を放棄していた頭は…
黒い塊+動かし=這い寄る混沌
と言う間違った方程式を紡ぎ出し、間違った答えを導き出した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!デカ○キなのだぁぁぁぁぁ!!!地球防衛軍に救援依頼をぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
血迷った俺は、正面百メートル程の所に公衆電話を見つけて走り出した。
正常な思考と判断能力が有れば、ズボンの中のスマホに気づいたし、そもそもこんな謎な物体Xを放置していた。
だが酔っ払い。
公衆電話へ急ぐあまり“迂回”が出来ず、千鳥足ダッシュ。
「救援依頼救援依頼救援依rコブベッ」
当たり前のように黒い物体に躓いて転倒した。
手を着くなんて発想もなく、顔面から地面に突っ込んだ。
シーン…と久方振りに駅内に静寂が戻った。
数分経ってようやく体を起こす。
そして、自分の下にある、地味に暖かて、少しだけ柔らかいものを見てーーー…
「………」
思考放棄。
ゴキ○リの上に倒れてしまった、という間違った絶望感で放心状態となっていた。
「…ゔっ…」
そんな時、黒い物体から声が聞こえた。
呻き声だ。
「…!?ゴ○ブリに呻き声なんてあるのか…?ハッ!まさかあまりの巨大化に伴い変態を遂げて声帯が生成されたのか!?そして発語出来るほどに発達したと言うのか!!?」
明らかに人の声だったと言うのに、完全に這い寄る混沌認定してしまった俺は気付かない。
「くそっ、なんで俺はッ!汚れてしまったんだッ!!かくなる上はコノ光景を何コレ珍千景にッ!!」
「君!こんな時間に駅で何をしてるんだい!」
やっと存在を思い出したスマホを取り出し、カメラを起動した所で視界外から声が掛かった。
青色の服と帽子…警察である。
「何って…このデカ○キを何コレ珍千景に投稿すンだよ!!」
「…顔が赤いね。アルコールの匂いもする。君未成年だろ?」
「ブブーーっ!ハッズレーー!!俺っちはれっきとした二十一歳ですぅぅ!!!
ピブー!(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎」
「君の下に居るのは人だろ!?ちょっと降りて署まで同行願おうか!」
「いーやーだぁー!!俺はッ!永遠の二十一歳だぁ!!」
あれよ、あれよと言う間に黒い物体と俺をパトに乗せた手際の良いあんちゃんに俺は拉致された。
最初のコメントを投稿しよう!