(元)魔王×(元)勇者           パクりだなんて言わないで

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(元)魔王×(元)勇者           パクりだなんて言わないで

周りが悲願の達成に、鎖からの解放に喜ぶ。 俺はまだ背を向けたまま、心臓の辺りに触れる。 確かに感じる、命を侵す気配。 神の加護とやらが消えた瞬間これだ。 …長くもって三、四日のものか。 それだけの時間がある。 十分じゃないか。 「勇者殿」 「勇者様」 近づいてくる気配と共に、声をかけられ振り返ると。 「戻りましょう。他の方々にも伝えなければ」 神官がそう言って、凱旋を促す。 この城には、他にも仲間が何人も残って居ると信じて。 俺も信じてはいる。 「あぁ。戻ろう」 最終決戦を生き残った者たちで、倒れてしまった仲間を運んでいく。 後で神官が冥福の祈りを捧げる。 俺は王都までは保たない。 わずかな自由を数十年振りに“俺”として生きる。 ーーー同情なのか、ただの偶然なのか…。 一瞬だけ、俺は玉座を振り返った。 全てを知っていて倒した俺は………。 目を伏せて、とう冷たくなりつつある仲間の骸を担ぎ直して、その場を離れた。 ーーーーー前世、俺は勇者だった。 神の代理人 悪を屠る者 人類最強 人類の希望 そうやって持ち上げられて、力の込められた剣を持たされた。 そして、何人もの仲間と旅をした。 始めは10程のガキだった俺も、全て終わった時……死んだのは30目前だった。 人類の敵…魔王がどんな存在かも、途中で気付いてしまった。 それでも、全ての人が俺が魔王を倒すことを望み、押しつけた。 戦う直前まで悩みはあった。 けど…倒した。 全身ズタボロになりながら。 もう、勇者なんてやらない。 今世は…魔王を敵として見ない。 奴も 俺も 周りに押されただけだ。
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