魔王×学生

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魔王×学生

俺の長所は順応性の高さ。 どんなに状況が理解し難くとも、すぐ順応…平常心に戻る。 悪く言えば…現実逃避が特技。 そんな俺はココ一ヶ月程、ファンタジー現象に見舞われていた。 晴れた空から一点集中の超局地豪雨。 スライムがDQばりに正面に現れる。 教科書を開ければ写真の中の植物が出てきたり、外を歩いて植物に襲われるなんてザラにある。 どこからともなく現れた動物達に襲われる…コレは好意だというのは体験して分かったが、普通に団体様がコワイ。 目のイッちゃった怖い人達に絡まれ、襲われる。 稀にゴブリンとかドラキラーも出現する。 目の合った知らない人に告られる、襲われる。 そんな俺は、木刀とターボライター、アルコールスプレー、折り畳み傘、タオル三枚、水筒が最低装備。 スライムと植物は燃やす。 学校内でやって怒られた。 アルコールスプレーとターボライターの合わせ技で火吹きみたいに。 他のモンスター及び怖い人達には木刀で対応。 正当防衛って言い張ってるけど、2回ほどサツの世話になった。 傘とタオルは超局地豪雨対策。ギリ傘が間に合う事もあれば、間に合わずに濡れる。 登校中だった場合、学校で着替える。 あまりの酷さに友人が呟きまくって、この前マスコミが来た。 追い返したけど。 親友は、あんまりな現実に、ファンタジーに出会すと考えるのを止める。 マスコミはあっさり(?)引いたけど、明らかにヤバそうな研究者らしき人物がストーキングやめずにコワイ。 動く植物やモンスター狙ってるぽかった。()めれ。 そんなアホみたいな一ヶ月を過ごした俺。 ある日親友の家に泊まった。 「なぁ、その背中のタトゥー。いつ入れたんだ?去年の夏なかっただろ」 「は?タトゥー?いや、やってねぇーし」 「いやいやいや。思いっきり入ってんじゃねーか。嘘言うなよ」 「やってねぇーし」 風呂上りに上半身裸でウロウロしてたら言われた。 言い合いの末、スマホで背中の写真を撮ってもらった。 確かにタトゥーみたいなのが入ってた。 黒一色で、俺の背中に描かれたドラゴンと薔薇、その背景に魔法陣ぽいモノ。 背中全体にわたるソレ。普通にスミ入れたら絶対痛い。 熱出して寝込んでる。 「お前の姉ちゃんがタトゥーシールでも仕込んだか?」 「今風呂上がったから消えてるハズだろ、ソレ」 「お前の洗い忘れ」 「洗ったからっ!不潔な子みたいに言うなよ!………ハッ!俺もう温泉行けねぇ!?」 「気にするのそこか」 取り敢えず、俺自身分からないので放置した。 ロンT着てゲームして就寝。 背中のタトゥー発見から約10日。 怖い方々に追い詰められた俺は十三階建てのビルから落ちた。 あ。コレ詰んだ。 と目を閉じ……ボフンと柔らかい衝撃。はて…? 閉じた目を開けたら天幕付きの超フカフカベッド。いとおかし。 上半身を起こす。体に異常なし。風景異常有り。 ただ広い部屋だ。 ベッドはキングサイズ以上。俺だけで………ゴロゴロ(計測中)………七人分…だと? 床は磨き上げられた石の床。 俺から見て右側にバルコニーっぽいものへ出るデカイ窓。 左側は三人がけくらいのソファがローテーブルを挟んで向かい合ってる。 更にその接客セットの奥に重そうな扉。 俺の正面には壁一面、床から天井まで本棚。 ココは何処の貴族の部屋だ。 取り敢えず起き上がり床へ…冷たいな。 …何故裸足なんだ? 俺はキッチリ靴揃えて飛び降りた記憶ナイヨ? …まぁいいや、室内だし。 歩いて窓の前へ…明るいなぁ…と思ったら…月が…なんか三十倍くらいの大きさ……。 は…?………考えずにいよう、今は他。 空はなんか赤っぽい…青空でなく赤空…。 周囲は…森ですね。紫色の葉がブッキーで……特に目ぼしい物なし。 室内で何か分かりそうなって言えば…本。 本棚に隙間なく並ぶ本達の背表紙には…全く見たことない字。 …ふむ。分からん。 韓国みたいに文字かどうか分からん型してるが、ハングルじゃない。 見える範囲で見渡しても知ってる文字なし。でも恐らく文字の種類はかなりあって、一言語ではない。 複数の言語の本があるって事は、この屋敷の主は知識欲が強いのか、頭が良いのか。 他を確認して何も無かったので、何故かソファに落ちていた俺の装備を持って部屋を出る。 鍵はかかっていない。 重厚そうな見た目に反して、たいした力もいらず、自宅の玄関のように扉は開いた。 部屋を出ると薄く明かりの灯った廊下が左右に延々と……幾つかは扉見えるけど…。 コリャ下手したら迷子だな。 この部屋を認識出来る様に、鞄からルーズリーフを出して“初めの間”と書いてマスキングテープで貼った。
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