1、梨央

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************  梨央のとなりの席は鈴木という男の子だ。  彼は眼鏡をかけていて、休憩時間には黙々と読書を嗜み、昼休みには教室から消える。そして午後からまた現れる。部活には入っておらず、放課後はすぐに帰宅する。  友達はいないようだった。  実に不思議だ、と梨央は思う。  高校2年生とは思えないほど落ち着いているのだ。なぜなら梨央のクラスメートと言えば、こうだ。 「なあ、今日遊びに行かね?」  茶髪にピアスをした男子が言った。 「どこ行くう?」  メイクとネイルに気合いの入った女子が反応した。 「とりあえず渋谷?」  別の男子が割り込む。 「あたしも混ぜてえ」  これまたばっちりメイクの女子が参加する。  そして。 「ねえ、梨央も来る?」  突然名前を呼ばれて梨央はビクッと肩を揺らした。  恐る恐る彼らへ目を向けると、メイクとネイルに気合いの入った女子、名前は瑠々子(るるこ)が冷めた表情で見ていた。彼女はこのクラスの女帝と呼ばれ、権力みたいなものを持っている。  蔑むような上から目線。  彼女のこの目が、梨央は苦手だった。 「え、うん……行く」  それ以外の返答は許されない。  断ろうものならあとで何をされるかわからない。 「よし、決まり」  その言葉で、梨央の今夜の予定が決められた。  心底嫌で仕方がなかったが、逃げられない。
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