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「この花の花言葉、知ってるかい?」
カレとのデート。
公園の遊歩道を歩いてるとき、カレったら側に生えてる花を突然指差して、そう言ったの。
ワタシ、分からなくってモジモジしてたら……、
「キミへの真実の愛だよ。それがボクの気持ち」
そう言ってさわやかに笑ったわ。ワタシはすっごく嬉しくって……。
ホント、ぞっこんLOVE!って感じ。
でもカレは、その花を摘んでプレゼントはしてくれなかったの。
「花だって生きてるんだ。摘んでやったらかわいそうだろ」
ムシも殺せやしない、やさしいカレらしいなって思った。
カレとの将来のため、ひとから借りてまで五百万円用立てたの。
カレはいなくなった。
まわりのみんなは騙されたんだって言うけれど、でも、きっとわたしが花言葉もロクに知らない女の子だから嫌われちゃったんだって思った。だから、必死に花言葉を学んだわ。
40年近く経ち、テレビ画面でまさか彼を見るとは思わなかった。
久しぶりに見たあどけない笑顔、老けたといっても面影が残ってる。
テレビ画面に大写しの写真。詐欺事件の容疑者、しかも女性を何人もたぶらかして、自分は手を汚さない指示役しかやらない主犯として。
彼にスノードロップを贈ろう。
『あなたの死を望みます』
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