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「ごめんなさい。。。」
泣きながらそう呟いた彼女は5束の花束の絵の傍で首を吊った。
彼女はずっと自分は恵まれていると考えていた。自分には親がいて、五体満足で、行きたい美大にもいけ、優しい彼氏もいる。お金にも困っていない。
しかし、ある日から何故か学校に行けなくなった。体調も何故か悪い。いつの間にか必修単位以外取れなくなり卒業も危ぶまれてきた。サボっている自分が悪いと思いながらも動けなくなったのだ。
そんな日が2年ほど続き、お世話になっている教授にカウンセリングに連れていかれた。そして、21年間生きてきて自分がずっと我慢していた事にようやく気がついた。彼女はとても鈍感だったのだ。
嫌な事があってもニコニコして、
「お前は幸せそうで羨ましいわ」
と言われるような人生だった。彼女は自分の本心を出すのが下手で、自分自身をも騙して生きていた。
カウンセリングはそんな彼女の本心を気がつかせてしまった。そして、様々な人への恨みが出てきてしまったのだ。特に家族への恨みがすごかった。
しかし、そんな彼女の気持ちを家族は理解しなかった。今まで1番の理解者であった母も、幸せだと思っていた家庭を壊されるのが嫌で、彼女の全てを否定した。そして、家族に理解されたいが為に、後悔させたいが為に、彼女は死を選んでしまった。家族への恨みを花言葉に乗せて、親兄弟へそれぞれ1束ずつ、合計4束花束の絵を残したのだった。
まず、全ての花束に<恨み>の意味をもつ「黒いバラ」と<復讐>の意味をもつ「クローバー」を入れ母の花束には「ガマズミ」を父の花束には「イベリス」を長男の花束には「チューベローズ」を次男の花束には「ゴボウ」を入れた。母の暴力、父の無関心、兄の性的虐待、モラル・ハラスメント、これら全てが彼女を殺すのだと伝えるために。
全てを用意し終え、彼女は大切な彼氏の存在を思い出した。最期に彼にだけは幸せな花束を渡したかった。白の「ダリア」とピンクの「バラ」、紫の「ヒヤシンス」を描き、
<幸せをありがとう。そして、ごめんなさい。>
と添えた。
文字は涙で濡れていた。
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