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「いいこと考えたわ。このすごろく、二人でやってみましょうよ」
「二人で? 優斗と一緒に、じゃなく?」
「ええ、二人がいいわ」
洋平は少々困惑の表情を浮かべて言った。
「やるって言っても、金券みたいなものもないし、マスだって二十マスくらいしかない。十分もあれば終わってしまうんじゃないか?」
「だから、ルールを決めるの。いい、よく聞いて」
真弓は説得するような口調で、一つ一つ丁寧に伝えた。
「サイコロを振って、止まったマスに書いてある内容に関連したことをお互い話すの。話す内容は、思い出でも、あの時言えなかったことでも、何でもいいわ。例えば『旅行』なら、二年前に優斗を連れていった温泉旅行のことでもいいし、私達が付き合っていた時に行ったスキーのでもいい。あなたの小さな頃に行った修学旅行でもいいわ。楽しかったこと、悔しかったこと、悲しかったこと。何でもいいから思っていたことを話すっていうのはどうかしら?」
洋平はゆっくりとした所作で口に入っていたものを飲み込んで、お茶を一すすりしてから口を開いた。
「それなら単にコマを進めるよりも時間がかかりそうだ。それでも、三、四回サイコロを振ればすぐに終わってしまうな」
「これならどうかしら」
返す刀で真弓が言った。
「サイコロを振るのは一日一回。優斗が眠った九時以降にご飯を食べながらやりましょう。それにサイコロも一から三までということにしましょうよ。四、五、六の目はそれぞれ一、二、三に読み換えて」
「頭がいいな、それなら最低でも一週間はかかる」
ふふんと自慢げな笑みを浮かべた真弓は言った。
「最後にもう一つ、ルールを加えましょうよ。先にあがった勝者は敗者に何でも好きな望みを一つ言える、っていうのはどうかしら。不可能なことでなければ、絶対に聞かなければならないの」
「ほう」
洋平は自嘲するように言った。
「高いバッグなんかは買ってやれないぞ」
「言ったでしょ、不可能なことじゃなければって」
あはは、うふふ、と二人の乾いた笑い声がリビングに広がった。
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