死に逝った感情に息吹を

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死に逝った感情に息吹を

▪朝陽×感情喪失白夜 ▪日常文 ――――――― こんな下らない世界に終止符をーーそう思ったのは、いつの日か。それが傷となり、膿となっては漏れ出して、そうして瘡蓋となり、完治した。それはそれは、とてつもなく良くない方向に。 「なあ、月之宮?」 「…………」 「また無視かよ」 「虫は飛んでない」 「あぁ~、確かにそうっすね。じゃあ、言い方変えるわ。 無視されてるよ、俺」 「誰に」 「お前さん以外に誰かいる?」 「…………」 逢魔時の縁側。暇を持て余すように、沈み行く夕陽を眺める二人。いつもの如く、無愛想な彼女を前に滴る朝陽の溜め息はどこか優しくて。 「喋る必要がない」 「作れな。俺がお前さんと喋りてぇの」 「何で?」 「『何で?』って……話すのに、一々理由が必要なのかよ」 「……肉細工に話しかけてるのと、変わらないのに」 青眼が鋭利な視線で朝陽を睨む。無を隠さない、寧ろ魅せた彼女の表情。朝陽の顔が一気に険しいものとなっていく。 「肉細工って何だ?」 「死体。人形」 外れた視線は夕陽へと流れた。これ以上にない強い言葉は、拒絶を燻らせ、彼の思考にとぐろを巻かせる。 感情がまるでない、彼女の横顔。目に映すだけで、痛々しい。 「本当に、人形ならーー」 「え」 だけど、それでも、諦めたくない。儚さを確かなものに、絶対的なものにしたくて、引き寄せたか細き腕。 「俺の好きにさせろな」 「…………」 抱き寄せた先、毛先を踊らされるかのように撫でられた頭に、彼女の表情が凍る。だけど、 「離されたくないんすか?」 「…………」 「いや、そのっ……、こ、ここいらで『嫌』とか何とか言って貰わんと」 「何で?」 「そしたらホレ、『感情があるなら人形じゃない』って……そう言えるから」 困惑するように呟かれたその一言に、彼女の目がきょとんとした。 だが、彼はそれに気付かず、懸命に言葉を走らせたのだ。 「いっ、いやな……慣れてねぇんだよ。女にこうするの……」 「…………」 「なぁ、月之宮ぁ~。何とか言えなあぁ~」 酷く素っ頓狂な声が飛ぶ。 指先から伝わる緊張と、辿々しい仕草と。 それを満喫する彼女が微笑みを浮かべた事を、彼は知らない。 ……END
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