打ち上げ

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「皐月ちゃん歌の声「可愛い」その曲によく合ってるね。」 なんとか歌い終えた私に圭太そう言った。 「ありがとっ」 たまにはお礼を言うくらい許されるだろう。 「初めてだ、俺の「可愛い」にポジティブな答えくれたの」 ほら、また簡単に調子に乗る。 「めんどくさいだけだつぅーの。」 「あ、しおりちゃん。王子様と一緒ってアニメもあるんだよね、俺、そのアニメのオープニング歌えるんだー」 突然話を逸らした圭太はそう言いながら曲を予約する。 アニメのオープニングはチャラ王の声優さんが歌ってる。 マイクをアイドル気取りで握る圭太。 私としおりは歌い始めた瞬間身震いをし、圭太を見た。 マジ王派の私ですら、感激するくらいの激似。 しおりは今にも倒れそうなくらい興奮している。 もはや、真似をしていると言うよりも、圭太そのものがチャラ王になっているようなものだ。 「やばい!圭太くんのうますぎる!もうチャラ王様だった!」 「それはよかった。」 圭太がしおりに対して優しく微笑む。 「しおりちゃん!めっちゃよかったよね?」 圭太が私の顔色を伺う。 「まぁ、よかったんじゃない?」 本当はすごくよかったと思う。でも、褒めるのはなんだか私のプライドが許さない。 「ねぇ、思ったんだけどさ」 坂下くんが横からボソリといった。 「どうしたんだよ?」 圭太はマイクを机に置くと心配そうに坂下くんの顔を覗き込む。 「なんで、篠山さんは圭太が嫌いなの?」 突然の質問に私は少しの間固まってしまった。 「それ、俺も気になってた!だって俺今まで全く皐月ちゃんに関わってないのに嫌われる理由なくない?」 「チャラいから。」 「は?それだけかよ。じゃ、俺が真面目になったら好きになってくれる?」 「真面目な人はゲームで人を落とすとかしません!」 「じゃあさ、なんでチャラい人が嫌いなの?」 坂下くんって、空気が読めないのか、わざとやってるのかどうしてこう変なことばかり聞いてくるのかな。 そこは触れて欲しくないところだ。 「それは…言いたくない。」 中学生の時のことを思い出す。 息が詰まる。苦しい。 「皐月ちゃん大丈夫?」 私の変化に気づいた圭太が私の背中をさする。 さっきまでの楽しい空気は一気に重いものとなってしまった。
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