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人がほとんどこない校舎裏に着くと、横山くんは、乱暴に掴んでいた腕を離した。
その勢いで私は尻餅をついた。
横山くんは地面に座り込む私を上から覗き込むように嘲笑った。
「お前が昨日あのまま帰るから俺が痛い目にあったじゃねーか。」
「あんなことできるわけない」
「なんだよ、キスの一回や二回減るもんじゃないし、いいだろ」
「嫌だよ。だってキスは愛情表現。好きな人としかできない。」
ばしり!
高い音が響いた時、私は頬が熱く。痛み出すのを感じた。
「黙れ。俺が受けた痛みはそんなもんじゃねーんだよ。お前のせいだかんな。」
横山くんはそう言うと私の胸ぐらを掴みそのまま立たせると、校舎の壁へと追い込んできた。
「本当は殴り倒してやりたいけど、お前が一番傷つくのはキスされることみたいだな。もしかしてファーストキス?一生忘れられないね。」
歯を見せて意地悪く笑う彼が私は怖かった。
近づく顔。
彼の長い前髪が私の額にかする。
彼の吐く温かい吐息が鼻にかかる。
微かに香る香水の匂い。
嫌だ。
私は顔を逸らした。
しかし、彼は、空いていた方の手で、私の顔を自分の方に向け直させた。
そのままからは私の顎をガッチリ掴み、私はもう抵抗できなくなってしまった。
あっけなく奪われてしまった唇
それは冷たく愛も優しさもない、ただただ気持ちの悪い行為であった。
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