はじまりは突然に

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「皐月ちゃんお弁当めっちゃ「可愛い」。自分で作ってんの?」 「そうだけど?てか、本当にうざいんだけど。私間違ってもあなたのこと好きにならないから。付き纏うのやめてくれないかな。」 「単純接触効果。って言葉聞いたことない?」 「関わることが多いと相手から好印象を得られるみたいなやつでしょ?」 私は卵焼きを食べながらこたえる。 「そうそう。少しでも俺のこと好きになってもらいたいからね。」 「今の時点で、あなた印象最悪だから。」 「お弁当作る女の子って家庭的でいいよね。そんな可愛いお弁当作ってもらえたら将来子どもも嬉しいだろうね。」 私はその言葉にゾッとして思わず圭太を睨んだ。 「ねぇ、圭太くんって『王子様と一緒』のチャラ王に似てるよね…?」 隣で菓子パンを齧っているしおりが嬉しそうにいう。 「あ!この前話してたやつでしょ。見せて!」 圭太も嬉しそうに身を乗り出して話を聞く。 「この人!ドSなんだけど女好きのチャラ男だよ。私この人大好きなの!」 「へぇー。でも、確か皐月ちゃんはもう1人の方が好きなんでしょ?」 「そうなんだよ。皐月ちゃんは私とは真逆なの。」 2人が盛り上がっている横で、 私は黙って黙々とお弁当を食べていた。 「圭太ー最近皐月ちゃんにべったりだよね。もしかしてゲームのターゲット?」 チャラ男の周りにはチャラ女が集まるのか、メイクの濃いカラフルな髪の女の子たちが一斉にうちの机を囲んだ。 「ビンゴー。」 圭太は手足を伸ばすと立ち上がった。 「今回は本気だよ。簡単には好きになってくれなさそうだし。」 チラリと圭太は私を盗み見ると飲み終えた缶ジュースをゴミ箱めがけて投げた。 カランと音を立てて見事ホールイン。 「どう?かっこいいでしょ?」 「ばっかじゃないの?かっこいいとか言う時点でかっこ悪いから。」 圭太は私の言葉にハハっと笑った。 「少しは俺のこと好きになった?」 「全然。早く私のことは諦めな。どうせゲームなんだから。」 「ゲーム…ねぇ…」 何されても動じない。 寧ろうざい。 そんなめんどくさい学校生活が続いていた。
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