球技大会

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球技大会

女子の黄色い声が体育館に響き渡る。 なぜなら、ただいま、あの、圭太がバスケの試合に出ているからだ。 私はペットボトルの水を一口口に含むと、首にかけていたタオルで軽く口元を拭いた 「皐月ちゃん次も試合出るの?」 しおりがバスケをする圭太に視線を向けながら私に尋ねた。 「うん、うちのチームさっきの試合でも勝ったからさ。」 「頑張ってね、でも残念だね、圭太くん見れないの」 しおりはニヤリと笑って私を見た。 「もー。何言ってんの。私はあんな奴嫌いだからさ」 「羨ましいな。皐月ちゃんが。」 しおりは再び圭太に視線を移すと嬉しそうな笑顔を浮かべて彼を見つめていた。 しおりのこんな表情初めて見たかもしれない。 「しおりってさぁ…」 「きゃーー!!」 私の小さな声は女子たちの歓声の中に消えていった。 「皐月ちゃん今の見た?圭太くんのダンクシュートめっちゃかっこよかったー。もう神様!」 みんなあんなやつのどこがいいんだか。 私は一瞬だけ試合をする圭太を見た。 チームメイトと嬉しそうにグータッチをしている。 汗で髪の毛がペタンとなっててなんだかいつもと違う人の様に思えた。 その時だ。 圭太は私の方に視線を向けた。 圭太は人差し指と中指をくっつけ唇の前に当てるとそれを右斜め上に飛ばした。 「きゃー今のなに!?」 再び女子たちが騒ぐ。 「しおり。私自分の試合いくね。つっても、みんな圭太の試合見てるから無観客だと思うけどね」 「私、皐月ちゃんの方に…」 「いーよ。しおりは圭太くんの試合見てな。せっかくここ見やすいんだから。じゃ!」 私はペットボトルを持ったまま自分の試合のある小アリーナへと走った。
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