十姉妹の有ちゃん

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          十姉妹の有ちゃん 私は、夕ちゃんという十姉妹の雌の小鳥を飼っています。 これから、夕ちゃんの感動的な話をします。夕ちゃんは、初め、飼っていた4匹の小鳥の内、まず、雄の小鳥のトム君が死にました。それから、鳥籠を掃除している時、雌の二匹が逃げてしまいました。 最後に残ったのは、ゴン君と言う雄の小鳥でした。そのため、私は、夕ちゃんを飼いました。二週間程、経ったある朝、夕ちゃんが、しきりに、 鳴いているのに気付きました。不思議に思った私は、鳥籠の中を覗くと、ゴン君の姿が見えません。たぶん、巣の中にいると思って、割りばしで、巣を突きました。 それでも、反応がありません。その時、夕ちゃんが餌を口バシで咥えて、巣の中へ入りました。 しかし、出てきたのは、夕ちゃんだけです。私は、更に強く割りばしで、巣を突きました。 すると、ゴン君が巣の中から落ちて来たのです。よく、見ると、ゴン君は死んでいました。夕ちゃんは、発狂したみたいに、鳥籠の中を飛びまわり、ゴン君を口バシで突いて、起こそうと します。それでも、ゴン君が起きないと、今度は、足で掴んで、揺さぶります。 ゴン君が死んだと分かった夕ちゃんは、「キー、キー」と鳴きながら、鳥籠の中を飛び廻ります。私が埋葬するために、ゴン君を取り出そうとすると、私の手を口バシで、突いて、じゃまします。 その様子を見た、感動のあまり、泣きました。それから、夕ちゃんに静かに語り掛けました。「有ちゃん、ゴン君は死んだのよ。天国へ行ったから、埋葬しないといけないの」 有ちゃんは、不思議そうな顔をします。 「埋葬というのは、土の中に埋めることなんだよ」と言うと、理解したらしく、観念して、巣の中へ、入って行きました。その後、1週間も 餌を食べなくなりました。心配した私は、何度も「ゴン君が天国に行って、安らかに眠っている」と言い聞かせました。 また、「餌を食べないと、有ちゃんも死んでしまうよ」とも、諭しました。ようやく、有ちゃんは、餌を食べ始めました。私は、ほっとしました。 今、失業中なので、新しい雄の小鳥を飼うことが出来ません。1日も早く就職して、雄の小鳥を飼ってあげたいと思っています。有ちゃんは、とても、寂しがりやで、私が傍に居ないと、「キー、キー」と 鳴きます。有ちゃんは、つぶらな瞳で、たいへん、可愛い小鳥です。 私が何か話すと、 首を傾げて、その意味を捉えようとします。有ちゃんは、私の「守り鳥」だと、信じています。 いつの日か、雄の小鳥と一緒になって、赤ちゃんを産み、幸福な家庭を持つことを願っています。
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