幸福のかぼちゃの会?

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幸福のかぼちゃの会?

 真理亜はごきげんで道を歩いていた。肩までのストレートヘアとひざ丈スカートが、春風にそよぐ。片手にはスーパーのビニール袋を提げている。  振っていたそれを、またのぞいた。なかには大きなブロッコリー、しかも国産! それが178円で買えてしまったのだ。今夜はクリームシチューで決まりだ。Yeah!  そんなほくほく顔の真理亜に、声を掛けた者があった。聞き覚えのない声だ。真理亜はどうせ何かの勧誘の類いだろうと、聞こえなかったふりをした。  ところがその女性は言った。 「以前にもお話ししましたよね?」  真理亜は、え?と思い、反射的に振り返ってしまった。  相手は微笑んで言った。 「幸福のかぼちゃの会の者です。」  全然覚えのない女性だった。前にも話したというのは、ふり向かせる手口だろう。  上手いなぁ、ヤバいかもなぁと思いつつも、真理亜はふり返った手前、一応返事をした。 「はぁ……。宗教かなにかですか?」  すると、相手は笑いながら、 「いえ、ちがいます。独身女性から成る互助会です。」 と言って、名刺を差し出してきた。 『スローライフ互助会     幸福のかぼちゃ      電話××××××××××』 「スローライフ、ですか。」  真理亜は少し関心を持って言った。女性は微笑んだまま、はいとうなずいて、 「このカーディガンも、会員のお友達の手編みなんですよ。」 と、カーディガンの裾を軽くひっぱった。  ライトグリーンのモヘアに、花のモチーフが留められていて、とても春らしかった。裾で10センチほど、毛糸と編み方が切り替わっていて、籠を思わせた。 「名前、どういう意味なんですか? 全然わかんないんですけど。」 「ふふふ、よく言われます。由来はですね、シンデレラのかぼちゃの馬車です。シンデレラは魔法の馬車に乗って、幸福を掴みに行きました。だから、それにあやかれるようにと満場一致で名付けました。」 「乙女チックですねー!」 「それもよく言われます。」  二人して笑った。  道の角で立ち止まると、女性は言った。 「野菜作りもしています。毎週木曜日に、第2公園で収穫物を販売していますので、よかったらいらしてください。」  女性は、それじゃあ、と会釈して角を曲がっていった。
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