39人が本棚に入れています
本棚に追加
母との別離
6歳の冬。
あと2ヶ月もすれば、小学校入学。
人見知りが激しかった私は、新しい友達ができるかちょっぴり不安な気持ちを抱えつつ...でも買ってもらったピカピカの赤いランドセルを見ながらワクワクしていた。
「結子ちゃん、小学校楽しみだね。」
母が、笑いながら私に話かける。
母は、明るい人。
父は休みの日は、私と1歳下の妹を公園に連れて行ったりしてくれたり、寝る前にハグをしてくれたりする優しい人。
どこにでも、ありそうな仲良し家族だ。
でも、この2週間後から家族崩壊が始まるなんて...。
その頃から、週末になると父だけ自宅に残り、私と妹は母に連れられて、毎週の様に母の実家に泊まりがけで行くようになる。
私は、優しい祖父母が大好きだったので、泊まりに行くのがとても楽しかった。
母は私と妹を祖父母に毎回預けて、友達と会うという口実で数時間出掛ける。
この理由は後々わかったのだが、
実は母には不倫相手がおり、その男と逢っていたのだ...。
母が、私と妹と父を置いて、不倫相手と駆け落ちをしてしまう数日前、幼稚園から帰った私は母が自分の洋服などをたくさん鞄に詰め込んでいる姿を目撃して、不安な気持ちになった事を今でも良く覚えている。
その夜から、私と妹を寝かしつけてから、母が駆け落ちする日まで、仲が良かった父と母が激しく罵り合い、髪を掴みあって大喧嘩をしていた。
余りにも激しく大声を出すので、私と妹は寝付けずに、恐ろしくて悲しくて不安で泣いていた。
ある日の夜、今日も両親の喧嘩が始まるのかと憂鬱になりながら過ごしていたら、纏めてあった荷物を母が持ち、そのまま出ていった。
父も私も妹も泣きながら止めたけど、私達の手を振り払い、外で待っている不倫相手の車に乗り込んだ。
それ以来、母が家に帰ってくる事は無かった。
実の子供よりも、男を取った母。
私は母に捨てられたのだ。
この時は分かっていなかったが、この事件をきっかけに、「大切な人から急に捨てられてしまうようなみじめな私。」の思いが心の中に芽生え、後の人生でこれが私を苦しめる事となった。
最初のコメントを投稿しよう!