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夕食後。予定どおり、ハロウィンの仮装の話が始まった。ちなみに仮装するのはここにいる4人。俺、雫、兄貴、琴子さんだけ。源神社には、ほかに桐島さん、白峰さんという神職がいるが、二人とも仮装はやらない。
桐島さんは「仮装なんて恥ずかしくて無理です。どうしてもと言うなら神社をやめます!」と顔を真っ赤にして拒否した。対照的に白峰さんは「ミイラの仮装をやりたい。それなら最低限の変装で済むしな。子どもがギャン泣きするからだめ? それがいいんじゃないか!」と妙な張り切り方をするので辞退してもらった。
「では、打ち合わせを始めようか」
兄貴が切り出す。気負う必要はない。俺が雫にイヤリングをあげるのは、あくまでハロウィンの仮装の一環なんだ。さりげなく──そう、暑い日に太陽を避けるために頭の上に手をかざすように、極々自然な調子で切り出させばいい。さりげなく……さりげなく……打ち合わせの合間に、さらりと話題に……。
「──こんなところかな。お疲れさまでした」
兄貴の一声で我に返った。気がつけば、打ち合わせが終わっている。時計を見ると、30分近く経っていた。時間を吹き飛ばされたような感覚だ。
「雫ちゃんの魔女っ子も、壮馬のフランケンシュタインも似合うと思うよ。楽しみだね」
そんな仮装をすることになったのか。雫は魔女っ子……見たい似合う絶対かわいい!
それに魔女っ子ならイヤリングも……。よし、いまこそさりげなく……行くぞ、さりげなく……。
「アア、ソウイエバシズクサン!」
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