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壮馬さんもご自分がこのイヤリングが似合うと思ったんですね!
…………。
…………。
…………。
ご自分?
きょとんとしてしまう俺に、雫は語る。
「身体の大きな壮馬さんがこんな小さなイヤリングをつけていたら、アンバランスでおもしろいと思ったんです。それで先ほど、ついまじまじと見つめてしまいました。失礼なことをしたと反省していたのですが、壮馬さんもわたしと同じように考えていたなんて!」
雫の表情も声音も、いつもどおり冷え冷えとしている。
なのにどことなくうれしそうで、俺はこくこく頷くことしかできない。
ははは……。なんだ、そういうことだったのか……。
いつものことながら発想が斜め上だ、この子……。
「どうしたんだ、壮馬? 『地球最後の日』というタイトルをつけられそうな顔してるよ」
「ソンナコトアリマセンヨ」
「壮ちゃんが日本語を覚えたばかりの外国人に戻った」
兄貴と琴子さんに乾き切った笑いを返し、俺はイヤリングを手にしたままなんとか立ち上がった。
「じゃあ、部屋に戻ります」
居間を出る。雫がじっと俺の背中を見つめている気がしたが、振り返る余裕はなかった。
*
部屋に戻った俺は畳に横になり、イヤリングの入った箱を眺めていた。
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