ちっちゃい巫女は壮馬がお好き?

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 社務所の応接間は、普段は俺たちの休憩室になっている。舞の稽古や宴会などで使う場合は、隣室との仕切りになっている襖をはずして大部屋にする。  いまは大部屋にしたこの部屋に、小学5、6年生くらいの女の子が立っていた。  一言で言えば、「かわいい子」だった。  両目はぱっちりと大きくて、色白で、黒い髪は真っ直ぐで艶やかで……顔の雰囲気自体は、雫と似ている。でも身長150センチ前後しかない雫よりも少し背が高く、受ける印象はまるで違う。ジャージに包まれた脚はすらりと長かった。  女の子は怒ったように眉根を寄せていたけれど、俺を見るなり顔を輝かせる。 「宮澤風花(みやざわふうか)です!」  そう言いながら俺の傍に駆け寄り、背伸びする風花ちゃん……って、近い。 「壮馬さんに巫女舞を見てもらえると思ってこの神社を指定したのに、ひどい目に遭ってるの」  うるうるした両目で見上げられても、なんのことかわからない。「随分と仲がよろしいですね」と雫に言われても、「いま初めて会ったんだから、いいも悪いもありませんよ」としか返せない。 「会ったのは初めてだけど、私は前から壮馬さんのことを知ってるの」  その一言を皮切りに、風花ちゃんは一気に語り出す。  先日、友だちと元町に来たとき源神社に寄った。そこで俺を見た。身体が大きいからこわい人かと思ったけれど、参拝者に丁寧だし、掃除もまじめにやっている。よくよく顔を見たらかっこいいと言えないこともないし、好感度が上がった。 「私が大きくなったら結婚したい、と思ったの……ま、まあ、少しだけどね。積極的に結婚したいわけじゃないけどね」  段々と早口になる風花ちゃんの頰は、触れたら火傷しそうなほど赤くなっていた。  もしかしなくても史上稀に見るレベルの明々白々なツンデレで、俺に惚れている……ということかな。だから俺がいないと巫女舞をしないのか。それなら、適当に宥めて……。 「でも!」  俺が口を開く前に、風花ちゃんは真っ直ぐ伸ばした人差し指を雫に向けた。 「壮馬さんは、この巫女さんに虐げられている!」
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