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虐げられてる? 俺が雫に?
戸惑っていると、風花ちゃんは再び語り出す。
俺と一緒に、雫の様子も見ていた。あまりにも美人なので、最初は見惚れた。でも雫は参拝者がいるときはにこにこしているのに、俺と二人きりになった途端、背筋が冷たくなるほど無愛想になる。俺の掃除のやり方や、参拝者へのお守りの渡し方にいろいろ文句をつけてもいる。どう見てもいじめだ。かわいそう。
「なにより問題なのは!」
風花ちゃんの見開いた目が、俺と雫をまとめて睨みつける。
「冷たくされてかわいそうなはずの壮馬さんが、うれしそうなことよ!」
おおう、と変な声を上げそうになった。
雫が俺を見上げる。
「別にうれしくありませんよね」
「──もちろん」
答えるまで、少し間ができてしまった。
もちろん怒られないに越したことはないのだが、優しいだけの雫は物足りないというか、なんというか。
「ほら、またうれしそう! 屈折してるっ!!」
風花ちゃんが地団駄を踏む。
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