ちっちゃい巫女は壮馬がお好き?

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 この人と結婚しているのですから。  流れるように、極々自然に、まるで太古から世界に存在している(ことわり)を告げるように、雫は言った。  ……って、え?  ええっ!? 「ねえ、壮馬さん」  雫は、そのままの口調で続ける。あまりに当然のことのように言うので、「そうだったのか」と納得しかけて、すぐに「そんなはずあるか!」と我に返った。でも雫は笑顔で「ね?」と繰り返す。  ……調子を合わせた方がよさそうだ。 「そうだね」  口をあんぐり開けていた風花ちゃんだったが、俺が頷いた途端、「でも!」と叫んだ。 「雫さんは巫女でしょう? 巫女って、結婚している人がやったらだめなんじゃないの?」 「よく知ってますね。でも壮馬さんが好きすぎて、我慢できなかったんです。壮馬さんにも迷惑がかかるから内緒にしてくださいね」  真っ直ぐに立てた人差し指を、桜色の唇に当てる雫。かわいい。 「だからわたしは、少しくらい壮馬さんに厳しくしてもいいんです。壮馬さんが屈折しているわけではなく、そういう夫婦なんです。おわかりですか?」 「う……ぐ……あ……うう……」  死に際の悪役のようなうめき声を上げ、後ずさる風花ちゃん。雫は俺から離れると、両手を打ち鳴らしながら言った。 「さあ、余計なことは気にしないで巫女舞の稽古を始めますよ」 「……はい」  俯いた風花ちゃんは、消え入りそうな声で応じる。  雫の狙いがわかった。なるほど、そういうことか。  でも。
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