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3日後。風花ちゃんは再び、巫女舞の稽古で源神社にやってきた。「こんにちは」と挨拶する顔を見て、内心で首を傾げる。
どこがどうとはうまく言えないが、前回となんだか顔つきが違う。
翌週、3度目に来たときは、違いがはっきりわかった。
凛々しくなっている。
目許も口許もきりりと引き締まっているし、「こんにちは」という声にまで、なんだか芯が通ったようだ。
この日の稽古は一時間以上延長になったが、後で雫に聞いたところによると、風花ちゃんが志願したのだという。
雫が噓をついたことに関しては、まだ納得したわけではない。
でも風花ちゃんの巫女舞は、成功しそうだ。
*
そして、今日。風花ちゃんの稽古最終日。
稽古が始まる前に、俺は雫に応接間に呼び出された。
雫と並んで畳に正座し、風花ちゃんと向かい合う。最後の稽古だからだろう、風花ちゃんは子ども用の巫女装束を纏っている。雫と顔つきが似ていることもあって、参拝者が振り向かずにはいられない雰囲気を漂わせていた。
「どうして壮馬さんが来たの?」
風花ちゃんが雫に訊ねる。俺も教えてほしい。視線でそれを伝えると、雫は言った。
「わたしは壮馬さんと結婚してないし、それ以前におつき合いもしていません」
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