雫ちゃんのお菓子づくり

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雫ちゃんのお菓子づくり

 なんでもできてしまう久遠雫(くおんしずく)だが、料理はあまり得意ではない。決して下手なわけではないが、上手でもない。可もなく不可もない、見た目も味も本当に普通だ。  もちろん、それは全然悪いことではない。でも「名探偵」と頼られるほど頭の回転が速かったり、難度の高い巫女舞を易々(やすやす)とこなしたり、書道の達人かよ!とツッコミを入れたくなるほど字がうまかったりとほかのことができすぎるせいで、「普通」の料理の腕はひどく目立つ。  雫は食事について「栄養摂取の一環」としか言っていないから、料理に興味関心がないのだろう。  源神社に住み着いている半ノラの猫、八咫(やた)に食べさせている餌も、栄養管理に基づいたものを最優先し、「猫ちゃんが喜ぶ味」系の宣伝をしているキャットフードには見向きもしない。  だから驚いた。  雫が休みの日に、わざわざ台所に立ったときは。
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