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今日はいい日だ、と八咫は思った。散歩から帰ってきたら、いつもあれこれ世話をしてくれる巫女さんがクッキーをつくってくれていたのだ。
巫女さんが食べさせてくれるご飯に不満はないけれど、いまひとつ味気ない。でも今日のクッキーは文句なくおいしくて、つい食べすぎてしまった。お腹がいっぱいで眠たい。毛繕いも終わったし、ゆっくり寝よう。
穏やかな陽射しを感じながら社務所の裏手で丸まっていると、細い指が額を撫でてきた。いつもの指だ、と夢うつつに思っていると、声が降ってくる。
「ごめんなさい、八咫。実験台のようにしてしまって。でも思ったより、ずっとおいしくできた。今度はあの人のためにつくりたいのだけれど、『俺には関係ない』と言われてしまったから──」
そこから先は眠りに落ちて、聞こえなかった。
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